「・・・ああ・・・」
ようやく返事をしたお兄ちゃんの眉間にあった皺は消えていた。
ただし鋭い目つきを残したままで。
どうしよう
もしかしてお兄ちゃん、怒ってる?!
なんでだろう?
康大クンは機嫌を損ねるような言動とか一切してないと思うんだけど
『あっ、お兄ちゃん・・・あのね、佐橋クンは、あの大手の生保会社の営業マンしていてね・・・』
「ああ・・・」
それだけ?
っていうか、そんなコト知ってるよね?
カレから生保商品のパンフレットを受け取ってるんだもん
『結構、優秀らしいよ~。いろんな営業所から引っ張りだこみたいでね・・』
なんか冷ややかな空気を感じてしまって、つい色々喋ってしまう
「そうでもないよ・・・」
あれっ?康大クンが反応しちゃった
「・・・ああ。」
っていうかお兄ちゃん
“そうでもないよ” に対して
“ああ” ってさすがに失礼なんじゃ
『お兄ちゃん・・・ああって・・・』
他人への気遣いを忘れないお兄ちゃんらしくない不思議な応対に私までつい反応してしまう。
それが耳に入ったのかお兄ちゃんは
「あっ、失礼しました・・・・」
驚いた表情を見せ、康大クンに向かって頭を下げた。
鋭い目付きしてたから怒ってるのかと思いきや
どうやら・・・うわの空ってヤツだったらしい
「いえ、こちらこそ・・・・病院でお顔を合わせる機会があるのに、いきなりこんなところで妹さんの彼だと打ち明けられたら驚きますよね?」
康大クンはお兄ちゃんとは対照的に、特に慌てる様子はなく、紳士的な態度でお兄ちゃんにそう話しかけてくれた。
「いや、その・・ええ、まあ・・・」
なんとも歯切れの悪さが目立つお兄ちゃん。
「更に驚かせてしまい申し訳ないのですが、伶菜さんと結婚させて頂きたいと思っており、ご挨拶させて頂きました。」
「・・・・ご挨拶・・・」
「ええ。本来なら伶菜さんのご両親にご挨拶すべきところだと思いますが、既にお亡くなりになっているということですので、お兄さんに結婚の承諾を頂きたいと思いまして。」
どうやら話を進めようとするエンジンがかかった様子の康大クン
丁寧にお兄ちゃんに挨拶して、ちゃんと結婚の承諾を貰おうとしているなんて
康大クン、この結婚に真剣なんだ
なのに私ったら
他人事のような目で彼らを見てる



