ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




一昨日の夜に私が結婚したい人がいることを彼に伝えた時には、笑顔どころか目もなかなか合わせてくれなかったのに
そういえば昨日の朝はいつもと変わった様子は感じられなかったんだけど
どういう心境の変化だろう?


でもなんだかんだ言ってもやっぱり
あの屈託ない少年のような笑顔
スキなんだ、私


今は私しか知らないであろう彼の笑顔がスキ
スキになっちゃいけないって散々思ってたけど、仕方ない

スキという気持ちに理屈は通用しないから
誰にも気が付かれないように、こっそりそう想っているのは問題ないよね?

康大クンと共に過ごすこれから
お兄ちゃんのことがスキという想いを隠し通さなきゃいけないんだ・・・



「パー♪」


そんなことをまた頭の中でこっそり考えていた私の隣で、無邪気にバームクーヘンに向かって両手を伸ばす祐希。


『お兄ちゃん、私も食べたい!』

「・・・そうだよな。紅茶でも淹れようか。」

『うん!』


彼のことがスキなくせに、彼をお兄ちゃんと呼ぶことが少し慣れてきた私。
そして、私にお兄ちゃんと呼ばれて、不思議そうな顔をしなくなった彼。
その3人家族で仲良くバームクーヘンを食べ始めた。


お昼過ぎののんびりとした空気
これもささやかな幸せ
私の大好きな光景の一つ

でも、いつまでもそれに浸っていてはいけない


『お兄ちゃん。』

「ん?なんだ?」


バームクーヘンが刺さったフォークを手にしたまま私のほうを見たお兄ちゃん。
スキな甘いモノを食べているせいかなんだか無防備。
康大クンと会う予定の約束を持ちかけるには、彼が無防備な今のほうが言いやすいかな?


『今度、カレに会ってくれる?お兄ちゃんの仕事がオフの土日いつでもいいから。』

「・・・・・・・」



暫く黙った後、再び笑顔を私に向けた彼。


『・・・お兄ちゃん?』

「ああ、週末な・・・・今度の土曜日でもいいぞ。休みだから。」


彼は涼しげな口ぶりでそう返事をしてくれた。
けれども私はその笑顔が彼がさっきまで見せていた笑顔とは全く異なるモノであることを見逃してはいなかった。
でも笑っているからいいかなっとその場をサラッと流してしまった私。


『じゃ、今週土曜日・・・予定空けておいてね♪』

「ああ。空けとく。」


その後は特に変わった様子を見せることなかったお兄ちゃん。


そして、あっという間に康大クンとお兄ちゃんが新栄のオシャレなカフェで、仕事以外で顔を合わせる土曜日という日がやってきてしまった。