「じゃあ、案内して。」
「かしこまりました。」
「日詠クン、こっちよ。」
ここのレストランで待ち合わせじゃないのか?
そう問いかけようとするも、立ち上がった彼女にこっちよと袖を引っ張られ、自分も立ち上がる。
それでは参りましょうと会釈したウエイターが俺達を誘導し、俺は三宅に袖を引っ張られながら歩かされる格好。
彼に付いていく形でエレベーターに乗せられた俺がなんとか理解できたのは、エレベーターが上昇していることぐらい。
上層階にもレストランがあるのか?
そんなことを考え始めた矢先にエレベーターのドアが開く。
「こちらの階になります。」
ウエイターはエレベーターの階数操作パネルの ”開” ボタンを押したまま、俺達に先に下りるように左手を前方に差し出す。
促されるがままエレベーターから降りる。
すぐ目の前の壁に掲げられた客室番号が書かれた看板につい目が行く。
辺りを見回し、その階の見取り図を探し出したが、レストランという案内は見当たらない。
三宅にどういうことか問い質そうとするも、
「こちらでございます。」
「こっちだって。」
案内を続けるウエイターがその隙を与えてくれず、彼についていくしか仕方がない状態。
落ち着いたブラウンの色調の壁。
ブラックの重量感がありそうなドアも所々に設置されている。
床に敷き詰められているのは濃いボルドーレッドの毛足がやや長めの絨毯。
その上を歩いても足が取られるような感覚がないのは、高級ホテルらしい上質の絨毯だからだろう。
そんなことに気を取られているうちに、ウエイターがとうとう立ち止まる。
そして彼は、1501という数字が書かれたプレートが取り付けられているドアの前で、背広の内ポケットからカードキーらしきものを取り出し、ドアに設置されたカードリーダーにそれを挿し込んだ。
ピッというカード認識音とともに、ドアロックが解除される。
すると、彼はカードをリーダーから抜き出し、ドアを開けた。
「こちらにお食事をご用意させて頂きました。」
「助かるわ。」
「こちらの部屋のカードキーになります。何かご用がありましたら内線9番のフロントにお申しつけ下さいませ。それでは私はここで失礼致します。」
「ありがとう。」
俺が今のこの状況を把握していないうちに、ここまで案内してくれたウエイターが三宅にカードキーを渡し、丁寧にお辞儀をしてからさっさと立ち去ってしまった。



