「伶菜?大丈夫?」
康大クンもすぐさましゃがみ込んで、抱きかかえて起こし上げようとしてくれる。
久しぶりの至近距離で彼を感じる
でもドキドキしない
お兄ちゃんに同じようなコトをされた時はドキドキしてたのに
『大丈夫。』
自分で立てるからと私は彼の腕を振り払う。
自分が本当に必要としている手は
・・・この手じゃない
「伶菜?」
私の異変を瞬時に察知したのか、康大クンは心配気に私を呼ぶ。
いけない
こんなことをしたら
康大クンにも自分の本当の気持ちに嘘をついたことがバレてしまう
『腕、くすぐったい・・』
私は作り笑いをしながら彼に囁く。
「ゴメン、くすぐったかった?自分で立ち上がれる?」
私の笑みに安心したのか、優しい言葉をかけてくれた彼。
『やっぱり立てないかも・・・手を貸して欲しいな・・』
私は彼のその優しさに甘える。
”お兄ちゃんから自立する” という自分の決意を土壇場でひっくり返すことなく、彼にもちゃんと伝える為に。
「ハイっ、じゃあ、行くよ。」
『うん。』
私は差し出された彼の右手に自分の右手を重ね合わせた。
グイっ!
「おっと、伶菜?!本当に大丈夫?」
『う、、ん。』
私の体は立ち膝姿勢のまま、彼の腕の中。
立ちくらみでもなく、足が絡まったわけでもなく
・・・自分からワザとそこへ飛び込んだ。
自分の表情を見られずに自分の決意を彼に伝えたかった。
顔を見られたら、自分の気持ちに嘘をついていることが完全にバレてしまうと思ったから。
「伶菜?」
『私ね・・・・康大クンの傍にいたい・・・・』
自分でも驚いてしまうぐらいサラリと出てきたその言葉。
そういえば祐希が東京の病院を退院する時に
日詠先生と一緒に暮らしたいという言葉を
本人に伝えるのは本当に大変だった
彼の言葉、仕草に胸が高鳴りっぱなしで
彼の傍に居たいという自分の気持ちを伝えたら
彼がどんな反応をするかまで気になったりして
自分自身の気持ちに正直にだった
とにかく一生懸命だった
だから大変だったな
でも、今
“傍にいたい” という同じ言葉を伝えたのに
自分の気持ちがしっかりと伴っていない言葉を紡ぐことって
こんなにも簡単なんだ・・・



