『彼のコト・・・・』
お兄ちゃんのコトをもうスキになっちゃいけないって
昨日の夜、涙と一緒に彼への想いを流したはずだったのに
“彼の事、好き”
その言葉は図星
そして、的確
でも今度こそは否定しなきゃダメ
私の動向には
祐希の、そしてお兄ちゃんの幸せがかかってるんだから
『彼のコト好きだなんて・・・そんなコト、あるわけない!!! 彼は私のお兄ちゃんなんだから!』
康大クンに怪しまれているらしい私はどもらないように、敢えて力強くそう否定した。
でもその否定は
自分の気持ちに対する嘘
大切な人達を守り抜く為の嘘
私はいつまでそんな嘘をつき通さなければならないだろう?
いつか、その嘘が嘘でなくなる
そんな時が本当に来るの?
「ならよかった。」
ならよかったって、
私がお兄ちゃんのコトをスキじゃなくてよかったってコト?
「そうだよな。彼は伶菜の兄貴なんだし。あり得ないよな・・」
あり得ない?
お兄ちゃんのコトをスキなことがあり得ないの?
私、本当はスキなんだよ・・・お兄ちゃんのコト
でも、それはもう許されない気持ち
お兄ちゃんが私や祐希に遠慮することなく、彼の幸せを掴んで欲しいという想い
祐希にも実の父親が必要なのかもしれないという想い
私がお兄ちゃんのコトがスキという気持ちだけで
それらの想いを台無しにしてはいけない
「それに言ってないよ。彼にはまだ。仕事の話していただけだから。」
『・・・言ってない?』
「ああ。伶菜の子供の父親が俺だってコトも、俺が伶菜にプロポーズしたこともまだ言っていない。」
試された?
私の気持ち
康大クンに試されたの?
でも、よかった
お兄ちゃんにまだ本当のコト知られていなくて
『よかった・・・・』
一気に押し寄せた安堵感からヘナヘナと足の力が抜け、私は崩れ落ちるように床にしゃがみ込む。



