「日詠先生、いい人だね。」
『えっ?』
「この医局の前で足を止めて自分の話に耳を傾けてくれる先生なんて殆どいないからさ・・・ちゃんと話を聞いてくれたよ。」
顔は笑っているのに
お兄ちゃんのこと褒めているのに
嬉しいとか、喜んでいるというような感情があまり感じられない
寧ろ、お兄ちゃんという人がどんな人なのかを探っていたような口ぶり
私が彼らの会話を耳にした時は、なんだか事務的な会話に聞こえたんだけど
もしかして、私がそれを耳にする前、
彼らの間で、何かあったの?
もしかして、
『康大クン、もしかして・・・お兄ちゃんに、結婚のコト話したの?』
「なにか不都合なことでもあった?」
『まさかあなたが祐希の父親であることまで・・・』
私は相変わらず微笑んだままでいる彼に笑いかける余裕なんてなかった。
早く彼らの間で何があったか、どんな会話が交わされたのかを知りたいその一心で。
彼はじっと私の瞳の奥を覗き込みながら、更にグッと口角を引き上げる。
「ああ、そのコトね・・・」
微笑んだままなのに、目の鋭さが増しているような気がする
どういうコトなの?
何があったの?
私が電車に飛び込もうとした時に、お腹の中にいた祐希の ”父親はいません” とお兄ちゃんに話したはず
祐希の実の父親が康大クンであることをお兄ちゃんは知っちゃったの?



