【Reina's eye ケース46:気になるふたり】



祐希が初めてひとり歩きした朝。
祐希と一緒に歩くことに夢中だったお兄ちゃんが自宅に忘れてしまったらしい着替えを届けに、祐希を連れて彼が勤める病院に向かう。


『あれっ?外来受付の人が “日詠先生、お昼休憩に入ってます” って言ってたのに、ここにいない・・・どこにいるんだろう?』

彼が昼休憩を過ごすことが多い病院の屋上でキョロキョロと辺りを見回す。


『あっ、祐希、ダメよ!そこに登っちゃ!』

いつも昼休みに彼が寝転がっているベンチを覗き込むも彼の姿はなく、その代わりに祐希がそこによじ登ろうとしていた。


『さすがにまだ、ベンチには足が届かないね。ほら、おいで。今度は医局に探しに行こっか!』

「キャッ♪」

私はベンチの座面をコンコンと叩いて遊び始めていた祐希を抱き上げ、医局の方に向かった。



お兄ちゃんから自立したら、もうココに来ることは祐希の心臓検診の時ぐらいになっちゃうのかな?

ココ・・・この病院ではいろいろなコトがあった


自殺しようとして、偶然お兄ちゃんによって助けられてこの病院に運ばれた
それなのに、再び同じコトを繰り返そうとしたり、お兄ちゃんに再び助けられたり
入院中、ほぼ毎日お兄ちゃんにホットミルクを入れて貰ったりもしたっけ

そういえば、お兄ちゃんに自分は私の兄だって言われたのもココで
自分の手で助けてやれないって言われたのも・・・ココだった
その時の私
彼に見捨てられたと思い込んでショックを受けたけど

そうじゃないんだって奥野先生に教えて貰ったり
真里や福本さんにも支えられたこともあって
前みたいに楽になりたいからって自殺という選択肢を選ぶコトをしなくなった

あの時、そうしなくて、死ななくて
本当によかった

でなきゃ、今の幸せを知らずに
お父さん、お母さんのところへ逝ってたら
二人とも快く私を迎え入れてくれなかっただろうから