【Reina's eye ケース45:やっと言えたありがとう】



『朝になっちゃった・・・』



とてつもなく長く
とてつもなく寂しい

そんな夜にもちゃんと終わりがあって
ちゃんと朝が来る

その朝にはちゃんと
彼の妹として前向きな気持ちで歩き始めなきゃ


結局、一晩中泣き続けた私はカーテンを開けて朝日が昇るのをじっと見つめながら自分にそう言い聞かせた。



『おはよう、お兄ちゃん!!』

「おはよ。」


いつものように起床後のシャワーを浴びてからダイニングにやってきた彼。
タオルで髪をゴシゴシと拭いているもまだポタポタと大粒の水滴が落ちている。

昨晩のふたりの間にあった出来事が嘘だったかのように、ようやく彼のことを “お兄ちゃん” と呼ぶことができた。

昨日の夜、彼がスキという想いを大量の涙とともに流してしまったから、お兄ちゃんという呼びかけで、もうどもらない。
お兄ちゃんと呼ばれた彼も、昨晩のように驚いた様子を一切見せることなく返事をしてくれる。


『ベーコン、カリカリに焼いておいたけど食べる?』

「ああ、食べたい。」

そして、一晩中泣き続けて目が赤いことに気が付かれないように焼いたベーコンが載せてあるお皿を彼の目の前に差し出す。


「祐希もベーコン、食べるか?」

そのお皿に気を取られたのか、彼の視線は私の目ではなく、ベーコンに向かい、それを摘み上げようとそれに箸を伸ばす。


『祐希はまだダメ!硬いし、塩分が多いから。』

「ダーメだって、祐希。残念だな・・・じゃあ、俺のバナナヨーグルトあげようか。」

『もう、祐希のバナナもあるってば・・・』

「よかったな、バナナあるってさ。」


昨晩のやり取りにお互い触れることのない、いつもの朝の光景。