お前が今、ここで笑っていてくれればそれでいい・・・だなんて
これから彼以外の人と結婚しようとしてるんだから
彼のコトをこれ以上スキにならないように突き放して欲しかった
それなのに、そんな優しさ見せるなんて
『・・・ばかぁ・・・』
彼をこれ以上スキになっちゃいけない自分を制御しきれなくて、みっともないとわかっていても彼に八つ当たりするような言葉を投げかけた私。
そんな大人気ない私に彼は何も言うことなく、後方に反らした右手で私の頭を軽くポンポンを叩いた。
そして彼は身体に絡み付けていた私の腕をゆっくりと振り解き、
ソファーから立ち上がって私の顔を一切見ることなく出入り口のドアの方へ向かってしまった。
私の頭に触れたその手まで優しく感じてしまった私。
彼に突き放されて、彼から離れなきゃいけないような状況に自分を追い込むために自分からやったコトなのに、 これじゃ逆効果だよ
もっともっと彼という人に惹かれちゃう
でもここで自分の決意が揺らいだら、
私の大切な人達の幸せが遠のいていっちゃう
だから、彼にちゃんと伝えなきゃ
彼を大切に想っている一人の人間として
そして
彼の妹として
彼に願わなきゃいけないコトを・・・
ガチャ、バタン
彼の背中を追いかけている途中で閉められてしまったリビング出入り口のドア。
でも、きっと彼はまだドアの向こうにいる
だって、彼は私を置き去りにすることなんてしないから
“自分は兄だから” と衝撃の告白をしたあの時も
ちゃんとドアの向こうにいたから
だから今も、ちゃんとドアの向こう側にいるはず
『お兄ちゃんも、ちゃんと一生涯大切にしたい人を見つけて、ちゃんと幸せになって!・・・・絶対だよ!』
私はドアに右手を当てながらそう語りかけた。
返事は聞こえない。
でも、ドアがガタッと揺れる振動を右手を介して感じ取った。



