『そう、モチロン・・だよ』

「・・・・・・・・」


再び彼は言葉を発しなくなってしまった。
そして、ついさっきまではニュース番組が映し出されていたTV。
それがいつの間にか深夜の音楽番組に変わっていて、沈黙状態の私達の間を耳慣れたメロディー、そして歌声が延々と流れる。


この状態、落ち着かない
私がついてしまった嘘が、彼にバレているのかいないのか?
どっちなの?


でも、なんとしてでもこの嘘をつき通さなければならないから
自分の大切な人達にちゃんと幸せになって貰うために

この嘘は決して悪い嘘じゃないんだ
だって福本さん言ってたモン
“自分の大切な人を守り抜くためにつく嘘もあるんだ” って

だから私、なんとしてでも嘘をつき通す
自分自身の幸せなんかもう考えずに
自分の大切な人達にちゃんと・・・幸せになって貰うために



『だって、そろそろ幸せになりたいから・・・だから、結婚することにしたの。』


ささやかだけど
私の中では今が最高に幸せなはずなのに
自分のついた嘘が彼にバレてるのかどうか不安な私は
彼と過ごした幸せな日々を否定するようなひどい嘘を重ねた。


「・・・・・・・・・・」


相変わらず沈黙状態の彼。
いまだに振り返ったりもしない。
そんな彼の様子もあってか、自分がついた嘘がバレているかどうかという不安は更に強まるばかり。


『彼、私のコト本当に大切に想ってくれてるし。』

「・・・・・・・・・」

『ここぞという時に私を助けてくれてるし。』

「・・・・・・・・・」


膨らみ続ける不安から、更に嘘を重ねる。
それはこれから結婚しようとしている相手の長所を言い表そうとしていた嘘。


『祐希のコトも大切にしてくれてるし。』

「・・・・・・・・・」

『私の作る鮭と茗荷(みょうが)の混ぜ寿司、美味しいってたくさん食べてくれるし。』

「・・・・・・・・」


それなのに、それはいつのまにか康大クンの長所を表すコトバなんかじゃなくなっていて。
それは私の中でかけがえのない存在である人の真実の姿を表す言葉になってしまっていた。