このままじっとしているわけにはいかない
彼女をこのままにしていたら何かが崩れてしまう
そんな気がする
それが何かはわからないけれど
それでも、もうこのまま動かずにはいられない
『伶菜・・・?』
「・・・・・・・・」
『お前、泣いてるのか?』
「・・・泣い、てなんかないよっ。」
否定はするものの、聞こえてくるのは涙声。
多分、貧血症状で倒れたことが伶菜をこんな風にしているんじゃない
おそらく、こんな彼女にしているのは
”-------とうとう現れちゃったの。”
”・・・・・伶菜ちゃんの元カレ。”
伶菜が寝かされていた処置室のカーテンの向こう側に身を寄せていた男の存在だろう
でも、もし本当にそうなら
俺に抱きつきながら、涙を堪えるとか
・・・なんでこんな風なことになっているんだ?
・・・なんで面と向かって来ない?
『じゃあ、なんでこんなこと・・・』
これじゃ、まるで
サヨナラを切り出されているみたいじゃないか
それは俺の勝手な思い込みなのか?
「もうこんなこと、できなくなるから。」
『・・伶菜・・・・』
もしかしたら
それは俺の勝手な思い込みじゃなかったのか?
”サヨナラ”
俺と伶菜は兄妹という関係なはずなのに
その言葉が俺の頭から離れてくれなかった
でも、どんな理由があるかがわからないうちは
伶菜にサヨナラなんかは言わせない



