ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





このままじっとしているわけにはいかない
彼女をこのままにしていたら何かが崩れてしまう
そんな気がする

それが何かはわからないけれど
それでも、もうこのまま動かずにはいられない



『伶菜・・・?』

「・・・・・・・・」

『お前、泣いてるのか?』

「・・・泣い、てなんかないよっ。」


否定はするものの、聞こえてくるのは涙声。

多分、貧血症状で倒れたことが伶菜をこんな風にしているんじゃない
おそらく、こんな彼女にしているのは


”-------とうとう現れちゃったの。”

”・・・・・伶菜ちゃんの元カレ。”


伶菜が寝かされていた処置室のカーテンの向こう側に身を寄せていた男の存在だろう



でも、もし本当にそうなら
俺に抱きつきながら、涙を堪えるとか

・・・なんでこんな風なことになっているんだ?
・・・なんで面と向かって来ない?


『じゃあ、なんでこんなこと・・・』


これじゃ、まるで
サヨナラを切り出されているみたいじゃないか

それは俺の勝手な思い込みなのか?



「もうこんなこと、できなくなるから。」

『・・伶菜・・・・』



もしかしたら
それは俺の勝手な思い込みじゃなかったのか?



”サヨナラ”


俺と伶菜は兄妹という関係なはずなのに
その言葉が俺の頭から離れてくれなかった


でも、どんな理由があるかがわからないうちは
伶菜にサヨナラなんかは言わせない