ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



妹・・・か
そういえば、今日の昼間に伶菜のことを他人にそう説明したっけ
しかも、ついさっき伶菜が俺のことを ”お兄ちゃん” と呼び始めた

そういえば
福本さんが伶菜の前に元カレが現れたと言ってきたのも今日だ

それらは偶然が重なったのか?
それとも、どこかで繋がっているのか?


どちらにしてもひとつだけ言えるのは

こうやって伶菜と一緒にいる今が変わってしまうのか
それとも
このままでいられるのか

それをどっちに動かすのかは、俺の手の中にはないということ
それを動かすのは、伶菜だから・・


俺ができるのは
彼女がちゃんと幸せになれるのかを見守ることぐらいだろう


だって俺は

『兄・・・か。』

彼女の兄という立場なのだから・・



そんなことを考えながらリビングのソファーに腰掛けて飲んでいたビール。
美味いとか不味いとかもいまいちわからない。

目の前で流れているニュース。
交通事故とか、株価とか、地域で行われた行事とかいろいろやっているけれど、それらもなんとなく耳に入ってくるぐらいだ。

そろそろ俺の部屋で眠っているであろう伶菜の様子を見にいかなくては・・・・そう思った時だった。




グ、、イッ



『・・・伶菜?』

「・・・・・・・・」

『・・・どうかした・・か?』

「・・・・・・・・」



まだ俺の部屋で眠っていると思っていたのに
いつの間に現れたんだろう?

再び俺の心臓を勝手に揺り動かす甘い香りを直に感じる。
ソファーに座ったままの俺を背後から抱き寄せる彼女の両腕。
その力が徐々に強まることに戸惑いをも感じる。

伶菜と俺
妹と兄という関係で
それほど気を遣うことなく、今までここで過ごしてきた
それは彼女との距離感が丁度いい間隔だったからだろう



でも、彼女から俺のほうに近付いてきた今の状況

『・・・おい、、、おいって!』

それを俺はどう解釈したらいいんだろう?



「・・・・・ちょっとだけでいいから、お願い・・・ほんのちょっとでいいからこのままでいて。」



耳元でそう囁いた伶菜の言う通り
俺がこのままでいることで
ちゃんとその答えは出るのだろうか?