スッキリとカットされているキレイな黒い髪
彼の長い指がその黒い髪をふわりと掻きあげている。
きっとこれは彼自身気がついてないクセ
集中してるときにみせるクセ
それを知ってるのは私だけであって欲しい
広い肩幅は見えるものの、大きな背中はソファーの背もたれで半分くらい隠れてしまっている。
足を組み替えたのか、若干左側を向いていた身体の向きが右側に変わる。
いつもこのリビングで見かける彼の姿
これも私のかけがえのない景色
これらも本当は私だけが知っていたい
誰にも渡したくないモノ
でも今度こそもう決めたの
自分が幸せになるための選択ではなく
自分の大切な人が幸せになる選択をすることを
だから
今度こそちゃんと
今の幸せな生活を自分から手放すということをしなきゃいけないんだ・・・って・・・・
グ、、イッ
「・・・伶菜?」
『・・・・・・・・』
「・・・どうかした・・か?」
『・・・・・・・・』
こんなことをしたら、
妹なのに、こんなことするなんて・・・ってきっと、突き放される
彼から突き放されるコト
・・・それは今の私に必要なこと
だから、彼にそうされる前に、最後に少しだけでいい
「・・・おい、、、おいって!」
私にとって大切なかけがえのない彼を感じたい
『・・・・・ちょっとだけでいいから、お願い・・・ほんのちょっとでいいからこのままでいて。』
彼の背後から彼を包む自分の両腕から
彼の背中にぴったりとくっつけた自分の頬から
それぞれから伝わってくる彼のちょっぴり高めな体温を
彼から突き放される前に
最後に少しだけでいいから
感じさせて・・・



