ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



バタン!



あっ、行っちゃった

今、日詠先生
“心配かけるの、俺だけにしろよな” って言ったよね?


たった一言だけど
決して丁寧な言葉とかじゃないけれど
私の心にズーンと入り込んでくる

その一言って彼が私のコトを妹だと思っているから
そう言うんだよね?

そうだよね?

もし、カレシとかにそんなコト言われたら
なんか自分を独占されてるみたいで
胸がキュンとするところだけど


でもこれはきっと
私の兄としての
私の家族としてのコトバ

今の境遇の私にはそう思うしかないんだ



じゃなきゃ・・・

私、彼のコト、本気でスキになっちゃって
彼のコト、諦められなくなる

彼が私のコトを妹と思ってるのに
彼が私のコトを好きかどうかわからないのに

彼のコトを本気でスキになるなんて
彼のコトを諦められないなんて

きっと許されないコトなんだ


彼から離れなきゃいけないのに、なかなか離れられない決断力に欠ける私には
決定打を打たれるが必要

お前は妹だからって、突き放されるような決定打が・・・・・




ガチャッ



急に起き上がったせいか、私は若干ふらつきながら彼の寝室のドアを開けた。


『リビングにいる・・よね?』


もう少し彼の香りに包まれていたかったけれど、決意が揺らいでしまうから、早く実行しなきゃ

康大クンと日詠先生が遭遇する前に早くそれを実行することで、彼に突き放されて
私が彼から自立することで、彼が私と祐希に気兼ねすることなく自由に恋愛できるようにしてあげて
康大クンと一緒になることで祐希に血の繋がった “お父さん” を作ってあげて
・・・・・それが今の私には一番賢い選択


カチャッ


ようやくふらつき感が治まった私は彼がいるはずのリビングのドアを音をたてないようにゆっくり開けた。
予測通り彼はリビングのソファーで缶ビールを片手に、いつものようにニュース番組を観ている。
かなり集中していたのか、私が室内に入ってきたのに気がついてないようだ。