ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「そろそろ点滴終わっただろ?入ってもいいか?」

真っ暗だった部屋に廊下から蛍光灯の光が漏れてきたのと共に彼の・・・低いけれど柔らかい声が聞こえてきた。


私、いつの間にか眠っていたんだ
日詠先生が普段眠ってるこのベッドで
洗い立てのシーツのはずだけど、かすかに彼の香りがする

このままこの香りに包まれていたいな
なんか彼に抱きしめられてる感じがするから



「伶菜?まだ寝てるか?」

ヤバイ、また怪しい妄想してた


『ハ、、ハイ』



ガチャッ!


「ほら、点滴終わってるだろ?テレパシー感じたから。」

そう言いながら彼はイタズラっぽく笑い、腕に挿入されていた点滴の針を手際よく引き抜いてくれた。


『・・・テレパシー、ホントに感じるの?』

「さあね・・・俺はお前にいつもテレパシー送ってるけど感じないか?」

『えっ?』


何、なに?どんなテレパシー?

もっと頭を使った質問をしてこい?だとか
もっと料理が上手になって欲しい?だとか
もっと、ドジやハヤトチリを減らして欲しい?

だとか

もっと
もっと・・・


『テレパシー・・・わかんないや・・・・』

正直に言っちゃった
妄想は得意だけど、さすがにテレパシーはね
だって本当にわかんないんだもん




ピン!!!!!



『イタッ!おでこ・・・に穴開くよお』

「ま、わかんなくてもいいけどね・・・あさりの味噌汁温めておいたからこっちへおいで。」


私の額を指で突いた後に意地悪っぽくそう声をかけてきた彼はクルリと身体の向きを変えて、額を押さえる私に背中を向けていた。

あ、自分から仕掛けておいて
誤魔化された!
どうしても気になるから逃がしちゃダメだ!



『先生?私に送ってるテレパシーって、何?』

お兄ちゃんと呼ぶ余裕なんか全然なく
背中越しにそう聴いてみた私。

本当は彼の顔を見ながら聞きたかったけれど、逃げられちゃうよりマシよね
さあ、教えて、日詠先生!
どんなヘコみそうなテレパシーでもちゃんと受け止めるから



さあ!




「お前さ・・・」

『えっ?』

さっきのちょっぴり意地悪な口調の彼とは別人のように、なぜだか切なく聞こえる。


なんかいけないこと、私、言っちゃった?
確か ”私に送っているテレパシーって何?” って聴いただけなんだけど

それとも、そんなことを聴いちゃったことを呆れているのかな?

あ~も~私ってば





「心配かけるのとか・・・・俺だけにしろ・・・・な。」