その音に祐希が即座に反応して、伝い歩きで玄関まで駆け寄る。
それはここ1ヶ月で祐希が成長した証。
それはこの家の主を出迎えるということ。
「パー!」
「ただいま、祐希!おっ、手に何もってるの?ミニカーか?ちょい貸してみ。」
玄関から聞こえてくる日詠先生と祐希の声がキッチンにもだんだん近づいてくる。
ガチャ!
「パー、、、パー」
祐希に後ろを追われながらリビングに入ってきた日詠先生。
ミニカーを自分に返せと言わんばかりに日詠先生に手を伸ばし続ける祐希。
そんな彼に日詠先生が差し出した手の上には、祐希がさっきまで持っていたミニカーだけではなくもう一台真新しいミニカーも一緒に載せられていた。
『あっ、それ・・・』
「おみやげ。今日、病院で点滴してたママの傍でずっとおりこうしていたご褒美ってヤツな!」
「パー、キャッ!」
目をキラキラさせながら真新しいミニカーに手を伸ばす祐希。
彼は日詠先生と一緒にお風呂を入り、一緒に添い寝もして貰っている羨ましい存在
多分、彼は日詠先生のことをパパと思っている
そんな彼にパパという言葉を祐希に教えたのは実は日詠先生だったりする
だから、彼が日詠先生に向かって、「パー」って呼ぶのも無理はない
でも、日詠先生のことをパパではなく、ママのお兄ちゃんであると祐希にも認識させるには、
『祐希!パパじゃないでしょ?お兄ちゃんでしょ?ママのお兄ちゃんなんだから!』
パパという呼び方も、今後のために修正が必要かな?
「えっ?」
私にそう声をかけられた祐希も、
そしてお兄ちゃんと呼ばれた日詠先生も
唖然としているように見える。
でもここで怯んだら、私の一大決心がガラガラと崩れてしまう
だから、
『おかえりなさい・・・そうだよねっ、お兄ちゃん♪』
「・・あっ、ああ。まあ、そうといえば、そうか、もな。」
不思議そうな顔して私を覗き込む日詠先生。
『よし、じゃあ、祐希・・・お兄ちゃんと一緒に先にお風呂に入ってきて♪ お兄ちゃんは今日ビール飲んでもいいよね?緊急コール当番じゃないよね?』
笑いで誤魔化せ!スマイル、スマイル!!



