『ねえ、お父さん、お母さん・・・私が日詠先生のところから自立すれば、彼は私に気兼ねすることなくこれからの人生の伴侶を探すことができるし、祐希に血の繋がった “お父さん” を作ってあげることもできるかもしれない。』
心の中だけにあった言葉。
それを祐希以外には誰もいないこの屋上で口にする。
『でも、私は、今、彼の妹として彼の傍で守って貰っていて、ただただ幸せだよ・・・』
自分の本音も口にする。
『私が、祐希のため、そして日詠先生のための幸せを優先するような選択をしても、私自身も幸せになれるかな?』
本音と背中合わせである想いも口にする。
『日詠先生に辛い過去を想い起こさせないような選択ができるかな?・・・私・・どうかな?』
自分の中にある迷いをも。
ピピピピッ、、、チチチッ・・・カアカアカア
私は天国の両親に向かってそう尋ねた。
けれども、彼らの声らしき気配を感じることができず、私の耳に聞こえてきたのは小鳥のさえずりと烏の鳴き声だけ。
そんな私を励ましてくれたもの。
薄黒い雲が流れ去った後のキレイな茜色の夕焼け。
あんなに薄暗く重かった空が
雲が流れれば、こんなにキレイな景色に変わる
ゆっくりと流れていったあの雲のように
私もじっくりと自分の気持ちを整理すれば
あの空がキレイな景色を得たように
私もみんなが幸せになる選択を得ることができるかもしれない
自分がこの先どうするかという結論を
相変わらず先延ばしにしてるのかもしれないけれど
・・・・・私にはもう少し時間が必要
日詠先生のコトが好き
その想いを自分の中だけでキレイに消し去り
完全に彼の妹になりきるための時間が必要なの
完全に彼の妹になりきる
それができなければ
日詠先生から自立すること
そして
祐希に血の繋がったお父さんを作ってあげるために康大クンの妻になること
それらは絶対できっこない
自分は彼の妹だから、彼と結ばれるコトは一切できない
そう割り切ることができなければ
祐希を、そして日詠先生を幸せにしてあげることなんてできないんだ
だから、“もう少しだけ・・”
何度もこのフレーズを使っているけれど
今度こそ
“もう少しだけ・・”
彼の傍に居させて下さい
『祐希、帰ろっか・・・・』
心の中で天国の両親にそう語りかけた私は、ベンチにつかまってよちよちと歩いていた祐希に声をかけながら抱き上げて、ふたりで屋上を後にした。



