ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





「高梨先生はね、腕がいいだけじゃなくて、患者さんの気持ちにも丁寧に耳を傾けられる人だった。」


懐かしそうな顔で父のことを語り始めた福本さん。


「何処行っちゃったんだろうって捜してると、病棟の廊下のベンチで患者さんと一緒に座って話を聞いてあげたりしてるんだよね。あまりにも自然な雰囲気だから、捜していても本人の前を素通りしてたりしたこともあったな。」

彼女は空になった点滴パックを手に持ってブラブラと振りながら、父親の人柄についてちょっぴりおどけて話してくれる。
私もその様子を頭の中で思い浮かべ、つい鼻先でフッと笑ってしまった。
でも福本さんはそんな私の様子にもお構いなしに言葉を紡ぐ。


「まだ幼い少年だったナオフミくんも高梨先生のそういう姿をランドセルを背負ったまま、遠くからじっと眺めてたな。その姿は今と違って可愛かったのよ。」

『日詠先生が?!』


ランドセル姿の日詠先生
今の白衣姿があまりにもピタッとハマッてるから彼のランドセル姿が想像できない

私も見てみたかったな
お父さんが真摯な態度で患者さんと向かい合う姿と
それをじっと見つめてるランドセル姿のナオフミ少年を


「そうそう。遠くからじっと見つめてるかと思いきや、高梨先生の手が空いたのを見計らって ”お父さん、帰ろ!” って甘えてみたり・・・私も彼に何度も ”お父さんまだ帰れないの?” ってかわいく詰め寄られたことあったな。ナオフミくん、高梨先生のコト、本当に大好きだったみたい・・・」

仕事に従事している時の営業スマイルとは異なる、やわらかい表情でそう話す福本さん。


お父さんや日詠先生を取り巻く空気が温かかったのがしっかりと伝わってくる
まるで彼の成長をずっと見守っている近所の気のいいお姉さんみたい
日詠先生のことをナオフミくん呼びができるのは、
きっと彼と彼女の間に温かい関係が築かれていたからこそなんだ