【Reina's eye ケース42:つかれた嘘の意味】



「伶菜ちゃん、ダメよ・・・あんなにあっさりとプロポーズの返事をしようとしちゃあ~。イイ女は少しぐらいもったいぶらなきゃね!」


康大クンが私達の元から立ち去った後。
福本さんは空になりかけている点滴パックに刺さっていた針を引き抜き、新しい点滴パックの針挿入部をアルコール綿で拭いた後、手際良くそこへ針を挿しこみ、小さく溜息をついた。


『えっ?福本さん???今の聞いてた?』

「聞いちゃった・・・ナオフミくんの代わりに・・」

『日詠先生の代わり?』


私に背を向ける格好で空になった点滴パックを点滴台から外している福本さんの白衣をグイッと引っ張る。
ナオフミくんの代わりにと言った彼女の発言から、康大クンの存在を日詠先生に知られていることに気がついたから。

私に白衣を引っ張られている福本さんは一瞬驚いたものの、掴まれた白衣の裾の引っ張られ具合を目で追って確認した後、私にクスッと笑いかけてくれた。


「いや、違うな・・・ナオフミくんは伶菜ちゃんが結婚話を持ちかけられているなんて露知らずだしね・・・・高梨先生の代わりというほうが正しいかな?アナタのお父さんの代わり・・・」

『高梨先生って・・・私のお父さん?・・・福本さん、やっぱり知り合い、なの?』


私と日詠先生を取り巻く新たな事実のニオイを漂わせた福本さんの白衣の裾を引っ張る私の右手の力は更に強まる。

康大クンから突然ふっかけられたプロポーズ問題が再びすっ飛んでしまうくらい、私はそのニオイが気になって仕方がない。


「そうよ。私は高梨先生が産科医師としてこの病院に従事していた時にナース2年生として産科病棟に勤務していたの。」


この人も東京の日詠先生と同様に
私の知らない父を
日詠先生が今でも憧れているという産科医師の高梨という人を
知ってるんだ・・・・