見せつけておかなきゃいけない
カーテンの影に隠れていて、顔が見えない人物に
今、俺の手の中にある現実
伶菜の傍にいるのは俺だということを


本当はその人物に挨拶とかするべきなんだろう
失神していた伶菜の傍に居てくれただろうから


でも、そんな余裕も俺にはない
カーテンの向こう側にいるのはおそらく

"伶菜の元カレ”
”祐希と血の繋がっている実の父親”

だから・・・だ



『プライベートな会話を見せ付けるとか・・・カッコ悪い。』


それが事実ならば
これから何が起こるか
物事がどう転がるのか
わからないから


『それでも、引き下がれない。』


ようやく手にした
今の俺にとってかけがえのない現状
それを簡単に手離すことなんてできない


『そうは言ったものの、どうしたらいいんだろう?』


これからどんなことが起こるのかという漠然とした不安
手離したくない現状
その狭間にいる俺は自分から動くことなんてできず、
自分ができることといったら
伶菜とその人物の間で起こることを見守るぐらいだろう



『仕事に戻らなきゃな・・・・。』


俺はモヤモヤした気持ちをどうにもすることもできず抱えながら業務に戻った。