今日仕事に行かなきゃいけないことをいちいち説明して、余計な心配をかけたくない。
その一心で俺は彼女の言葉を遮るように作っておいたスクランブルエッグを彼女の口へ運ぶ。
普通なら、”何をするんだ” と怒られてもおかしくない俺のその行動
でも、伶菜はちょっと違う
食べることがダイスキな彼女は怒るどころか、スクランブルエッグの出来栄えの良さを喜んでくれたりする
その後に、体を気遣ってくれる言葉も添えてくれたりもする
彼女のそういう反応
それによって俺のペースを乱されることも多いけれど、
そういう乱され方も悪くはない
むしろ、俺自身は楽しんでいるぐらいだ
『行ってくる。次帰ってくるのはあさってかな・・・あさっての夕飯は任せろ。五目ご飯と茶碗蒸しと・・・鯖の味噌煮もつけようか。』
食べることもダイスキな彼女をどうやって喜ばせようか
どんな反応をするのだろうか
どんな風に俺のペースを乱してくるのか・・・と
だから俺は、自分の家に
伶菜達がいる家に帰ることが増えた
俺がようやく手の中に入れた
かけがえのない、愛おしくてたまらないでもあるその場所に
そして、俺は
『行って来ます。』
自分の家であり、
伶菜達がいる家でもあるこの家から出かけることも増えた。
自分が前へ進むための一歩を踏み出そうとする時にも
背中を押してくれるその場所から。



