「冷たっ!」
『あっ、ゴメンナサイ・・・』
調子に乗りすぎて一気に劣勢に逆戻りな私
なんかほんわかムードだったのにやっちゃったなぁ
いくら優しい日詠先生でも、さすがによく冷えたすりおろしりんごを首筋にこぼされたらげんなりしちゃうよね?
肝心なところでダメだな、ワタシ
そんなコトよりはやく首筋にこぼしてしまったりんごを拭き取ってあげなきゃ!
そして急いでタオルに手を伸ばした瞬間。
「林檎、冷たくて美味いよな・・・ありがとな」
彼はそう言いながら指先をちょっぴり咥えていて、彼の首筋にこぼしてしまっていたはずのりんごは姿を消していた。
こういうさり気ない優しさにも胸がキュンとせずにはいられない
やっぱり私、彼のコト、スキだな
兄妹の関係じゃなかったら
スキって言えるのに・・・
でも本当は兄妹の関係じゃないから
スキって、言えるよね?
『日詠先生・・・・私・・・』
「ん?・・・なんだ?」
聴こえづらい右耳を軽く手で押さえながらも、いつもと変わらない自然な口調で私にそう聞き返す彼の声を聞いて・・・私はハッとした。
もし、スキということを伝えて
兄妹だからそういう関係にはなれないって言われたら
私、どうするの?
兄妹じゃないことまでも彼に打ち明けるの?
もしそれまで彼に打ち明けて
彼が私を・・・・一人の女性として愛せないというコトになったら
こういうほんわかとした家族としてのやりとりまで、なくなってしまう?
それにさっき
命を落としたのが私だったら、今の俺はいなかったかもしれないって
日詠先生言ってた
それってあの場所で
久保医師が自ら命を絶った病院の屋上で
あの時、同じように私が自ら命を絶っていたら、
日詠先生も生きていられなかったっていうコト?
それって私が妹だから
だからそんな風に想ってくれてるの?
じゃあ、もし妹じゃなかったら
そんな風に想ってくれないの?
日詠先生の妹という立場
赤の他人という立場
どっちが彼とより近い距離でいられる?
どっちが幸せ?



