「・・・冷たいタオル、気持ち、いいな」
相変わらず目を閉じたままそう呟いた彼。
『へっ?あれ?そういうコトするんじゃないんだ・・あっ!!!!』
「・・・そういうコトって?」
目を閉じていたはずの彼が不思議そうな顔して私を覗き込んでいた。
そうだよね
風邪ひいて凄い熱出てるんだもん
そんなコトするわけないよね
そんなコトの内容を聴かれても言えない、
言えない
恥ずかしい・・・話題逸らさなきゃ
りんご、りんご
そうそうりんご食べてもらわなきゃ
『お、起きてた?・・・すり、すりっ、すりおろしたりんご、食べる?』
私、噛んでる~、 噛んでるよぉ
慌てるな
慌てるな
慌てると余計なコトまで
言ってはいけないコトまで言っちゃうから
慌てるな、ワタシ!
「・・・すり、、すり、、すりりんご、食べる・・・」
よかった
“そういうコト” の真相に突っ込まれずに済んだ
しかも
いつも病院ではクールな感じなのに “すり、すり、すりりんご” なんて
やだ、先生ってば、かわいい・・・
こんな日詠先生、福本さんとかが見たらすぐに頭の精密検査とかを手配しちゃいそうだよ
私、ついさっきまで劣勢だったけど
先生、熱があるせいかスキがありそうだから
今日は珍しく私のペースで
いつも世話を焼いてくれるのは日詠先生のほうだけど
今日は私が世話を焼かせて頂きます
だって、私、日詠先生の家族だから
風邪ひいてるときぐらい、世話焼かせて欲しいな
『ラジャ! 任せて!!!! はい・・・あ~ん。』
彼に隠し事してるコトなんかすっかり忘れて、風邪をひいてる彼のお世話をする気マンマンの私はスプーンですりおろしりんごを勢いよくすくい上げ彼の口元に運んだ。
つい調子に乗ってラブラブなカップルがするようなコトやっちゃったけど、食べてくれるかな?
でも、やってみたかった
いつもは何でも器用にこなしてしまう日詠先生のお世話を焼くということをね
風邪ひいて動けない時ぐらいしかやらせて貰えないから、今がチャンスかも
これも家族の特権ってヤツだよね?
「アーッ・・・」
再び目を閉じおもむろに小さく口を開いた彼。
あまりにも自然に口を開いた姿を見て驚いた私は手元が狂い、彼の首筋にすりおろしりんごをこぼしてしまう。



