コンコンッ!
彼がいる時には入ったことのない彼の寝室のドアをノック。
中からは返事も物音もなにも聞こえて来ない。
勝手に入って申し訳ないと思いながらもドアを静かに開けたが、それでも何も聞こえてこなかった。
私は豆球の灯りが燈っている寝室内を忍び足で彼のベッドのほうへ近付いてみる。
すると彼はダッフルコートを着用したままベッドに横になって目を閉じていた。
『あらら、汗かいてる。』
額だけでなく首にもうっすら汗をかいているものの、眠っている彼の顔はなぜか穏やかに見える。
そんな彼を起こすのに対して気が引けてしまった私は、冷たいタオルを彼の額の上に載せただけで部屋を出て行くことに。
とりあえず、彼が目を覚ましたらすぐにりんごを食べられるようベッドのすぐ傍にあるローテーブルにそのトレイを置いた。
その瞬間・・・・
カランッ
氷が金属製のボウルのへりにあたってしまった音が寝室内に響く。
しまった
先生、起きちゃったかな?
私はすぐさま彼の様子を窺う。
私の心配をよそに目を閉じたままの彼。
私は彼に背中を向けふうっと一息をつき、再び寝室のドアのほうへ歩こうとした瞬間、
『えっ?!』
自分の右腕をグッと掴まれてしまった。
あれ?私、動けない?!
日詠先生、起きているの?
どうしちゃったの?
ココ、日詠先生の部屋なのに
ふたりきりなのに
先生、風邪ひいてるのに
祐希はあっちで寝てるのに
私、こんな格好だし・・・
先生と私は一応兄妹というコトになっているはずなのに
そういうコトになっちゃうわけ?
でも、実は兄妹じゃないから、そういうコトになってもいいのかな?
どうしよう
どうしよう
化粧落としたままで眉描いてないし
ココロの準備が・・・・
「伶菜・・・」
『は、、ハイッ!!』
とうとう来ちゃったの?!
一線を越えてしまうその時が・・・



