ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「そっか、今、ここにお前がいるってコトは、祐希がグッスリか?」

『うん。あっ、そうだ。先生、なすとほうれん草の味噌汁あるけど飲む?』


こうやって、いつもの振る舞いをするしかないんだ・・・


私は後ろめたい気持ちを掻き消そうと自ら話題を変え、先生の返事を待つことなしに味噌汁の入った鍋の前に立ちガスの火を点けた。
ガスのスイッチが強火にセットされたまま慌てて火を点けてしまったせいで、お鍋の中でボコッと大きな音がたってしまい、びっくりして右斜め後ろに仰け反ってしまった。


その直後、私の鼻をくすぐるあの香りと共に

「悪い、このままでいて。」

私の左肩の上には少し前屈みした彼のおでこが載せられていた。


そういえば前にもこんなコトあったな
その時は背中から抱きしめられて、日詠先生が疲労困憊でそんなことしたのかなって思ったけど

今度は、どうしたんだろう?
やっぱり疲労困憊だから?

それとも

三宅教授に圧力をかけられたりとか
産科の後輩医師である久保先生が亡くなったショックとか
いろいろあったからなのかな?

でもどう聴いたらいいのかわからないよ

彼に隠し事をしてる私としては
彼にどう質問したらいいのか迷いが出てしまう

油断したら、彼に隠し事をしているのがバレてしまうようなコトをポロリと言ってしまいそうで


『・・・日詠先生?』


だから私は取りあえず彼の名前を呼び、語尾のトーンを上げて疑問形にしただけで止める。


それでも彼は私から離れようとはしない。
それだけではなく、

「夜中に帰って来てさ、明かりが点いてるっていいよな・・帰る場所があるって感じでさ・・・・」

その状態のまま私の耳元でゆっくりとそう囁いた彼。



自分の体全体に電気が走ったような感覚を覚えただけでなく、彼の額が触れている自分の肩ではさらにジワジワと熱を帯びていくのまでもを感じてしまう。


「不謹慎かもしれないけどさ、俺・・・あの場所で命を落としたのがお前じゃなくてよかったと思ってる。もしそれがお前だったら俺・・・」


途切れてしまった彼の言葉。


もしそれがお前だったら俺・・・・って
その続きは何?