ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



クルマを運転することもおっくうで、丁度、夜間救急に受診で訪れたらしい患者さんが乗ってきたらしいタクシーが病院玄関に停車していたため、それに乗車して自宅へ向かう。


いつも電車で帰ってくる時は自宅マンションのベランダが見える方向から歩いて帰ってくるが、今日は玄関方向から帰ってきたため、部屋の灯りは一切見えない。
その代わりに見えるのは、ゆらゆら揺れて見える玄関の灯りだけ。

自宅マンションの玄関前に到着したタクシーを降りるのもフラフラする状態で、運転手にも心配されたぐらいだ。



『とうとう、ヤバそうだな、俺。』



夜中でよかった
昼間、マンションの廊下でこんな千鳥足状態で歩いていたら、住人に救急車でも呼ばれそうだ

やっとのことで自宅玄関に到着し、鍵を開ける。
こんなにフラついているのに、いつものようにこっそりと寝室にいる伶菜達の様子をドアの隙間からこっそりと窺い、寝顔を見て安心する。


玄関に自分以外の靴があること
廊下の灯りがついていること

そして、

自分の帰宅をずっと待っていたかのように、ダイニングテーブルの上におかずが盛られた皿と食器が置かれていること

”お疲れ様です。味噌汁もありますよ~、温めて食べて下さいね!伶菜” と可愛い文字で書かれたメモが置いてあること


その光景にいつも以上に安堵する俺は、

『こういうの・・・もう手離せない・・・』

つい本音が漏れた。