ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



NICUから医局へ戻り、時計に目をやると、時刻は午後8時半を少し過ぎていた。
やるべき業務は全て終わっていたが、ずっと手付かず状態だった研究会の資料作りの締め切りが迫っていた俺。


『ちょっと待ってみるか。倉田さんの様子を気になることだしな。』

森村医師がここへ戻って来たら、倉田さんの話をしたいと思った俺は、医局のデスクで資料作りを行いながら、彼を待ってみることにした。


午後10時。

『眠くて堪らない。』

資料作りに取り組む集中力が途切れ、コーヒーメーカーのポットに残っていたコーヒーをマグカップに注ぎ飲んだ。


午前0時前。

コーヒーのカフェインでも勝てなかった眠気に負けて資料作りの途中で居眠りをし、目を覚まして時計をみたらその時刻。

辺りを見回しても森村医師どころか他の医師の姿もない。


『さすがにもう帰ったよな?当直でもない限りは。』


居眠りをしてしまったせいか、ダルさを感じた俺。
やらなきゃいけないことがまだ残っているのに、このままだと流石に体力的に持たないと判断した俺は久しぶりに自宅に帰ることにした。

こんな夜遅くだから、伶菜達は寝ていると思う
でも、体だけでなく、気持ちももう限界

一緒に朝ごはんを食べるだけでもいい
家に帰りたい
伶菜達がいる俺達の家に・・



『あ~、着替えしないとな。』


家に一分一秒でも早く帰りたいと心は逸るのに着替えという簡単な行為でも体が思うように動いてくれない。
頭がぼーっとする中、ノロノロとロッカーに向かい、何とか着替えを終えて、タイムカードの打刻をする。