「伶菜さん、いきなりこんな話を聞かせてしまってゴメンな。でも、キミには聞いておいて欲しかった・・・尚史の強い意向がきっかけで、彼とキミは兄妹という不安定な関係のまま一緒に暮らしているんだろう?」
日詠先生と私が同居していることを先生が知っていたんだ
日詠先生がちゃんと話しておいてくれたのかな?
「だから、聞いて欲しかったんだ・・・尚史とキミは血縁関係にないという事実を知った上でキミのこれからの将来、尚史とこのままの関係で過ごしていくのか、もっと安定した関係になって過ごしていくのか・・・それとも、彼から離れるのか・・・まずはキミ自身に決めて欲しかったから。」
先生は涙を拭きなさいときちんとアイロンがあてられた淡いブルー色のハンカチを差し出しながら、力強い瞳で私に諭すように語りかけてくれた。
そんな大切なコトを私自身が決めるなんて
日詠先生本人は事実を知らされていないのに
なんで私なんかがそんなことを?
『・・・日詠先生よりも・・彼よりも先にその事実を私なんかが知ってもよかったんですか?』
私はひっそり泣いている場合じゃなかった。
だって、当の日詠先生だけが置き去りにされているような気がしたから。
「ああ、これからどうするかはキミが決めるんだ。どういう決断を下しても、尚史のことは私達がいくらでも支える。それが、尚史とキミというまだ幼かった兄妹を引き裂いてしまった僕ら夫婦がキミにしてあげられる唯一の償いなんだ・・・キミの将来をちゃんとした形で後押ししてあげることがね。」
私が彼に ”私達は血の繋がった兄妹じゃない” ということを伝えたら、今の関係のままいるのは無理
多分、もう一緒にはいられない
逆に私が彼にそれを伝えなかったら、ずっと兄妹という関係のままでずっと一緒にいられるかもしれない
でも、日詠先生と私、どちらかに将来を共に歩きたい人が出てきたら、兄妹である私達は一緒にはいられない
東京の日詠先生が隠してきた真実
それを日詠先生に伝えるか、伝えないかで、
私達の関係は随分変わってしまう
日詠先生がまだ知らないであろう真実の行方までもが
私の手の中に託されてしまったんだ



