ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




私は頭が飛んでいってしまう位の凄い勢いで首を横に振った。
そして自然に涙が頬を伝う。


「ゴメン、僕が泣かしてしまった・・・のかな?」

心配気な表情で私の顔を覗き込む先生。


『・・・違う、んです。嬉しくて。先生が父のことを話してくれるために私をココに連れてきてくれたんですよね?今日、私、初めて父が産科医師をしていたことを知ったから・・・だからですよね?その詳しい説明をし』



カシャン・・・


私の言葉の途中で、かすかに聞こえてくるBGMを掻い潜るように響き渡った音。
それは先生がお皿の上にナイフとフォークをハの字に置いた音。


「・・・ゴメン、伶菜さん、僕は高梨のコトを話すためだけにキミをココに連れて来たわけじゃないんだ・・・」


そんな顔しないで
私、嬉しかったんだからそんな顔しないで下さい
心配気な、そしてなんだか悩まし気なそんな顔を

でも、お父さんのコトだけを話すためだけじゃないってことは
先生が心臓手術をして下さった祐希のこと?

それとも・・・・



「僕がキミに話さなくてはならないのは・・・・尚史のコトなんだ・・・・」



尚史って
名古屋の日詠先生のコト?

どういうコト?


『あの・・・それはさっき三宅教授もおっしゃっていたように日詠先生はこのままこの病院に残れるって・・・』


私は油断していた。
私のお父さんが産科医師だったという事実を初めて知ったコトで頭がいっぱいで

だから、東京の日詠先生が私に話しておきたいコトが日詠先生のコトだったなんて・・・・想像すらしていなかった。



「その問題じゃないんだ。僕が話しておきたいコトは。」



じゃあ、何があるの?
彼の神妙な面持ちからはなんとなくいい話題を想像できない

もしかして

日詠先生と私が実は同居しているコトを彼が最近知って、それで一言物申すというコトなのかな?

とりあえず勝手に予想してみたものの
本当にそんなコトなのかな?