ビルが建ち並ぶ通りの1本裏側の通りに小さくひっそりと建っているといっていいであろうそのお店。
店先には色鮮やかな花やハーブが植えられたプランターが並んでおり、黒板風の看板に手書きで書かれているメニューからも温かみが感じられる。
そこが東京の日詠先生のオススメのお店らしい。
カラン、カラン!!
濃茶色のやや色褪せた木製のドアにぶら下がっていた同じ色調の大きなベル。
東京の日詠先生がそのドアを開けた瞬間、そのベルが優しさ溢れるレトロな音を奏でる。
「中へどうぞ!」
先生の爽やかな笑顔に誘われるように店の中へ恐る恐る入った私。
店内は若干薄暗く、壁には外国人が描かれたセピア色のポスターが掲げられている。
昔懐かしい蓄音機からはしっとりとした雰囲気のジャズが流れる。
「いらっしゃい、日詠くん。久しぶりだね・・・随分若い恋人だね・・あんなキレイな奥さんが居るのにさ・・・で、何、食べる?」
私達に声をかけてきたのはおそらく東京の日詠先生よりも少し上の年代に見えるこの店のマスター。
マスターはカウンターから出てきて私達をテーブルに案内してくれた。
「ホント久しぶりだよな・・・それにしてもマスター、彼女のコトを恋人なんて言ったら、高梨に猛抗議されちゃうだろ?」
先生は ”ここのはなんでも美味いから、僕も迷うんだ” とも言いながら、メニュー表を渡してくれる。
確かにどれも美味しそう
カウンターに大きな鉄板があったから鉄板焼き専門店かと思ったら、洋食もあるんだ
先生が迷っちゃうのもわかるな
「じゃあ、彼女が高梨クンの・・・言われてみれば目元が似てるよな・・・初めまして、この店のマスターの中瀬です。日詠クン達には彼らが高校生の頃からひいきにして貰っているんだよ。」
じゃあ、このお店
お父さんも来ていたんだ
だから、先生は私をここに連れてきてくれたのかな・・・?



