『・・・・・・・・・』
でも、流されるしかないんだ
この病院の患者さん達を守るためには、俺の信念にこだわることよりも
俺がこの病院から出て行くことを選ぶしかないんだ
「尚史、諦めるな!! なぜ俺を利用しない?俺は・・・俺はお前の父親なんだぞ!!」
父さんが声を荒げて俺を説得するなんて
初めてかもしれない
いつも、俺が選ぶ道に進めばいい
そういうスタンスだったのに
今の状況に流されそうになっている俺を見透かされた
だから、こんなことを言わせてしまったのだろう
でも、東京医科薬科大学医学部長選挙のライバル候補である産婦人科教授に対してウチの病院への医師派遣依頼するということ
それは、父さんが医学部長選挙の候補から降りなければいけない状況に追い込むことになるだろう
医学部長になって世界に通用する医師を育てたいという彼の信念
それに向かって順調に歩んできた彼
そんな彼の今まで築いてきたものが自分のせいで崩れてしまうこと
それは俺の本意ではない
『父さん、そこまでしてくれなくていい・・これは自分自身の問題なんだから・・・』
だから、俺は彼を頼ったりはできない
そう思った。
けれども、
「俺は息子のために、そして高梨の娘さんのためにそれぐらいのコトしかできないからな・・・・彼らにあんな辛い想いをさせちゃったから・・・・職権乱用となじられるかもしれないが、それでもいい。自分の子供のためにこういう形でしか親らしいことができないから・・・」
親らしいことをしたいという彼の言葉。
それが俺の心を動かした。
親らしいことをさせて欲しいという彼の気持ちが伝わって来たから。



