ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「ウチの大学の産婦人科教授に依頼する。」


その手があったんだ
なんだかんだ言っても教授なんだもん・・・・それくらい簡単なことなのかも


「日詠、お前・・・大学医学部長の座をその産婦人科教授と争っている最中だろっ?そんなコトしたらお前に勝ち目はなくなるぞ!!」


今、現在、日詠先生のお父さんはそんな立場にあったんだ
それが現実
もしそれが本当ならば、悔しいけれど三宅教授と言う通り
きっと日詠先生も彼のお父さんにそこまでして貰ってまで
自分の信念を守り抜こうとは思ってないと思う


「父さん、そこまでしてくれなくていい・・これは自分自身の問題なんだから・・・」


そう、彼はそういう人だ
自分のために誰かが犠牲になることは
絶対に許せない・・・そういう人

だから、父親に勝ち目のない勝負をさせることなく
自分自身が犠牲になることを選んでしまうんだろう
彼は日詠先生はそういう人だから



「俺は息子のために、そして高梨の娘さんのためにそれぐらいのコトしかできないからな・・・・彼らにあんな辛い想いをさせちゃったから・・・・職権乱用となじられるかもしれないが、それでもいい。自分の子供のためにこういう形でしか親らしいことができないから・・・」


そう呟いた東京の日詠先生は微笑んでいた。
苦笑いなんかじゃなくて、なんだか嬉しそうに微笑んでいた。
まるで・・・無くしたと思っていたモノを見つけ出した時のような顔をして。



「尚史・・・高梨が、お前が憧れ続けている人間が大切にしていた信念はどんなモノだった?」

「それは・・・」


まだ自分がどうしたらいいのか困惑しているような日詠先生は口篭ってしまう。


「ちゃんと言葉にするんだ。」

そんな彼に東京の日詠先生は真っ直ぐな瞳で言葉を求めた。



「・・・誰もが・・・どんな境遇の人でもこの病院を、この病院を頼ってくれる誰もが・・・」

「最後までちゃんと言葉にするんだ。」

「誰もが平等に、母子ともに幸せな出産を迎え、そして出産後もその幸せを抱き続けることができるような関わりを大切にしたい。」

「それはこの病院でしか、その信念を貫き通すことはできない筈だろう?」

「・・・・・・・」


東京の日詠先生の顔からはいつの間にかさっきの微笑みが消えていた。
そんな彼からその言葉を投げかけられた彼は目を閉じ、そしてグッと唇を噛んだ。