ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「キミは学生時代からよく口にしてただろ?・・・”母子共に幸せな気持ちで出産に臨むことができ、そして出産後でもその気持ちをずっと持ち続けることができるような関わりを大切にしたい・・・そうすることで虐待で苦しむ子供を一人でも減らしたい” という想いを・・・・」

「・・・・・・・・・」


日詠先生だけでなく、福本さんもそして私も無言のまま三宅教授という人の言葉に耳を傾ける。





「この病院の体制ではそれを叶えることは無理だ。家内の病院なら、それを叶えることがきっとできるぞ!こんな病院、潰れてしまってもいいんだ!! だから、どうだ、日詠くん!! 家内の病院へ来ないか?私の娘の恵理の婿になれば、将来、病院をキミに託そうとも思っているから・・」

「・・・・・・・・・」

日詠先生は何も言葉を発しないまま三宅教授という人の顔を力強さが感じられない目でじっと見つめたまま。


「それでもどうしてもこの病院のことが心配で辞められないのであれば、キミが家内の病院に移り、そして恵理の婿になることを条件にウチの大学の医局員の撤退を白紙にしてもいい。」

「・・・・・・・・」


この交換条件、聞いたことがある
この三宅教授っていう人
私は日詠先生のお荷物と言い放ったあの内科医師の三宅さんという人のお父さんなんだ

酷い

自分の大学の医局員が自殺したなんてそんな悲しい事件が起こった最中に
こんな交換条件を持ち出すなんて酷いよ

日詠先生が今、自分の目の前にいる患者さん達を不安にさせるようなコトができないことを知っていて、そんな交換条件を突きつけるなんて・・・・

いくら大学教授とはいえ、日詠先生と同じ産婦人科医師がするようなことじゃない
酷すぎるよ






「三宅・・・お前は、アイツが・・・高梨が自分の身を削ってまで守り抜こうとしたこの病院をお前のその手で潰そうとするのか?高梨が、彼が遺して逝った彼の娘さんの目の前でお前はそんなことができるのか?」


高梨の娘さんって、私のコト?
どういうコト?

それにこの声
聞き覚えのある声

でも、日詠先生じゃない




「・・・父さん。」


ロマンスグレー色の頭髪で背の高い
・・・日詠先生のお父さんでもあり
・・・祐希の心臓執刀医でもある東京の日詠先生

が屋上へ繋がるもう一つの出入り口から彼らの立っている場所へゆっくりと近づいていた。