ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




それから久保を見かけたのは、翌日の昼。
昨日の状況を確認したいと俺を呼んだ産科部長の部屋の中だった。


「日詠くん、キミも昨日、ERでのことを知っているだろ?」

『ええ、ERスタッフから状況は聴いています。あと、妊婦さんのご主人にも状況の説明と謝罪を行いました。』

「そのご主人が、なんで久保くんが謝罪をしてこないのかと医療相談室に訴えて来たらしくてね。」


部長は困惑の表情で辞表と書かれた封筒を差し出して来た。


「久保くんのだ。」

『どういうことですか?』

「責任を感じているから辞めるそうだ。私も何があったか聴けていない状況なんだけどね。」



辞めるという方法を選ぼうとしている久保。
昨日の状況を本人から説明を受けていない状況のままであることは何も変わっていないのに。


「久保くん、日詠くんと一緒に話してくれ。何があったのかを。」

「・・・・・・」


部長室の壁掛け時計の秒針が時を刻む音だけが響く。
昨日、ERで見かけた死んだような目のままの久保。

説明を求めても彼にはできないと(さと)った俺は、部長のほうを向いて首を横に降った。


「とりあえず、少し時間を置いて、それからまた話を聴かせてもらうことにしよう。辞表は院長に渡さず、私が預かっておくから、久保くんは今日は休みなさい。それでまた後日説明をしてくれ。」

「・・・すみません。」


ようやく言葉を発した久保。
彼は部長に一礼をしてから、何も語ることなく部長室を後にした。