ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「日詠先生、こっち、お願いします。」

「藤本さん、まだいきむの待って下さい。」

臍帯(さいたい)が圧迫されている・・・オペ(手術)したほうが良さそうだ。」

「オペ室連絡します。」

落ち着いていたと思っていた産科病棟のほうで、動きが激しくなった。


『山村さん、ERにいる久保から連絡入ったら、オペ室に繋いで。』

「わかりました。」

そのため、俺は急いで手術室へ向かった。


日曜日の今日は手術室のスタッフも平日よりかは少ないこともあり、手術室はバタバタ。
一刻を争う状況なのに、いつもよりも手術を始めるのがワンテンポ遅れた。
その分、自分が手術に集中すれば大丈夫だと言い聞かせながら手元を動かす。


『よし、もう大丈夫だ。』

母体も胎児も無事に救うことができ、手術を終えて産科病棟に戻った。


「日詠先生、ちょっといいですか?」

いつも冷静な山村看護主任が慌てた様子で俺を呼んだ。


『久保から連絡あった?』

「いえ、久保先生からはないんですが、ERのスタッフから・・・」


これまた珍しく言葉の最後を濁した山村看護主任の影響もあってか、俺は普段はあまり感じない変な胸騒ぎを覚えた。