さすがに昨晩の夕飯時とは異なり、早いテンポで食べる俺。
入江さんも同様で、伶菜が “男の人ってホント食べるの早いですね。ちゃんと噛んで食べてます?” と真顔で言ってきたことには俺達ふたりとも笑ってしまった。


入江さんも一緒に過ごした朝食
天然発言を隠せない伶菜とそこを緩く突っ込む入江さんという、いつもと違う空気で楽しかった
多分入江さんもそうだったに違いない

でも俺達以上に楽しそうだったのは伶菜
入江さんに “またいつでも遊びに来てくださいね” と言った時の伶菜の寂しそうな顔を見て
そう思わずにはいられない


「伶菜さん、楽しそうでよかったな。」

『ええ、おかげさまで。』

「ややこしく考えさせたりして泣かすなよ。伶菜さんのコト。」

『・・・ややこしいですか?俺。』

「多分な。」


最寄りの駅へ向かうクルマの中。
入江さんがどういう経緯を経て、こんなことを言ったのかわからなかったが、駅に着いてしまったため、それを聴き出すことはできなかった。


「またな。」

『ええ、また。』

入江さんを無事に駅まで送った俺は、その足で出勤した。



『寝落ちとか、久しぶりだな。』


日曜日だが、救急患者対応当番病院だったこの日。
昨晩、そして今朝の楽しい食卓が本当に現実にあったとは思えないぐらいの忙しさが俺を待っていた。