それからどれくらい時間が経ったのだろう?
伶菜、そして入江さんは何をしていたのだろう?


「ほらっ、日詠、起きろ!明日、出勤だろ?そろそろ風呂入って寝ないと、明日に響くぞ。いつまでも若い気でいると痛い目にあうし!!」

『へっ?い、い、入江さん?』

「ほら、寝とぼけてないで起きろ!そういうことなんで、伶菜さん、おやすみなさい・・・」


ソファーで眠ってしまっていた俺は入江さんに引き摺られながらなんとか自分の部屋へ戻った。


翌朝、目が覚めた時、昨日と同じ服を着ていたことに気が付き、慌ててシャワーを浴びに浴室に向かう。
通りかかったキッチン横の少し開いていたドアから男女の話し声が聴こえてくる。


「伶菜さん、目玉焼きはカリカリ派?」

「そうなんです。外側だけクリスピーな感じ、スキです。」

「僕もなんだよね。目玉焼きには醤油派それともソース派?」

「醤油もソースもどっちも好きです。入江さんは?」

「おれは醤油派かな。」


声を聴いているだけでも楽しそう。
昨晩、酒のせいで寝落ちしただけでなく、今朝、寝坊までしてしまったらしい俺はその楽しそうな空間に割って入る余裕がなくて、そのまま浴室へ向かった。

その後、風呂から出てきた俺がダイニングへ入ると、美味しそうな朝食が準備されていた。


「日詠先生、おはようございます。確か今日、仕事ですよね。食べましょ。朝ごはん。」

トーストされたクロワッサンがたくさん入ったカゴを持ちながら伶菜が俺を誘ってくれる。


『おはよ。寝坊して悪かったな・・・・あっ、入江さん、おはようございます。朝食準備してもらってすみません。』

「おはよう。今日、仕事なんだって?昨日、酔い潰しちゃったけど大丈夫か?」


新聞を読んでいた入江さんが涼しい顔で俺を心配してくれる。
一緒に飲んでた筈なのに、なんでそんな爽やかなんだ、朝から・・・


『大丈夫です。早々に寝落ちしましたから。入江さんは今日、日曜日なので休みですよね?』

「ああ、休みだけど、部活の顧問の仕事でやり残していたことがあったから、早めに戻らなきゃいけないんだ。」

『じゃあ、俺、駅までクルマで送ります。』

「助かる。じゃあ、頼むな。」

伶菜の “クロワッサン、冷めちゃいますよ~” の声で俺達は早速朝食を食べ始めた。