ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



アドバイスに感謝する日とかどういう意味なのかと首を傾げる。

レジのすぐ傍で押し付けられた牛乳を持ったまま、それについてのんびり考えるわけにもいかず、既に手に持っていた栄養ドリンクと一緒にレジで購入して病棟に戻った。
そして、とりあえず冷やしておこうと牛乳を手に取り、給湯室の冷蔵庫の扉を開けた瞬間、ひんやりとした空気に晒された。


『今晩は冷えそうだな・・・』

左手に牛乳を持ったまま冷蔵庫の扉を閉めて、食器棚にある俺のマグカップをもう一度取り出した。
その奥にこっそりとしまってある私物のメイプルシロップと小さなスプーンも。



『ずっと暖かかったから、作るの、久しぶりだ。』

買ってきたばかりの牛乳。
ストローを差すタイプのドリンクパックだったため、バックの端を引き上げ、引き出しの中にあった刃先が曲げられている安全なハサミでその部分を切り取る。


『おっと、少しこぼれた。』

うっかりパックの側面を強く押してしまった左手の力を少し緩めながらマグカップに注ぎ込む。

『レンジで1分だっけ?』

それを電子レンジに入れ加熱する。
その間にメイプルシロップの蓋を開ける。
この流れはいつもの流れ。
待っている間にメイプルシロップの賞味期限が大丈夫かを確認。
チン♪と高い音がした直後、電子レンジの駆動音が止まり、中からマグカップを取り出す。


『よし、適温。』

一旦、温かくなったマグカップを流し台の上に置く。
久しぶりに手にしたメイプルシロップは蓋部分で少し固まっていたものの、ボトルを押すとちゃんと中味が出る。
それをスプーンで掬い取り、湯気の立つマグカップに垂らしこんだ。

甘い香りが辺りに漂う。
スプーンでマグカップの中のホットミルクをくるくるとかき回し少しだけそれを掬い上げ、すぐさまそれを自分の口元に運んだ。


『よし、この味。』

小さくガッツポーズ。
そんなポーズをしたのは本当に久しぶりかもしれない。