「伶菜さんのお子さん、年はいくつ?」
『6ヶ月です。ようやくおすわりができるようになってきたぐらいで・・・』
「かわいくて仕方ないでしょ?」
優しい笑顔でそう問いかけてくれた入江さん。
『ハイ、それはもう・・・夜泣きが酷い時はあんまりかわいく見えないんですけど、昼間は本当にかわいいから夜泣きも許せちゃうんです♪』
「母親業は大変だよね・・・でもかわいい子供の為には母親は強くなるってよく言うもんね。凄いよな・・・で、日詠はちゃんといいパパしてるかい?」
入江さんは私達の前を行く日詠先生に聞こえないような囁き声でそう問いかけてきた。
『えっ?! パパ?・・・パパじゃなくて、私、彼の妹なんです・・・シングルマザーなんで居候させて貰ってるだけで。』
「伶菜さんって、妹さんだったんだ・・・てっきり日詠の結婚相手だと思ってたよ・・・アイツ、伶菜さんと一緒に暮らし始めたと話してくれただけだから。」
結婚という二文字が耳にひっかかった私は驚きのあまり余裕がなくなり、自分の頭を小刻みに横に振ることによって否定するのが精一杯。
「妹さん、だったんだ・・・」
『・・・・・・・・・・』
「そーゆーコト!! 店、着いたぞ、入ろう・・」
こっそりと聞き耳と立てていたらしい日詠先生が私達の方を振り返って、私の代わりに妹であることを肯定してくれた。
「そーゆーコトね・・・・まあ、いいや。日詠、後からたっぷり聴かせて貰おうかな。さ、伶菜さんも中、入って!! この店、確か、ダージリンティーシフォンケーキが美味いだよな。」
入江さんはそう言いながらニッコリと笑いかけてくれていた。
私、入江さんの持ってる雰囲気も
なんか心地よく感じちゃう
「伶菜、騙されるなよ・・・大学の先輩だからってさ。」
隣に座った日詠先生がなぜか鋭い目付きをしたまま私の耳元でそう囁いてきた。
騙されるなよって
ただ、入江さんの雰囲気も心地いいなって思っただけで
日詠先生が兄として私に忠告しなきゃいけないくらい
そんなに入江さんって危険な男の人なの?
でも、あれっ?
今、日詠先生、大学の先輩って言った?



