奥野さんが俺のことを好き?
確かに面倒はみてもらっているような気はするけど
それが好きという感情に繋がるのか?
でもそれはなにか違う気がする
だから、私が出て行かなきゃなんて
そんなこと言うなよ
本当に守ってやりたい人は
ただひとり
俺の中では
ずっと変わらず、ブレたりもしていないんだから
『でも、それでも、俺にはどうしても、どんなコトをしても自分の手で守ってやりたい人がいるから。』
俺のその言葉を聞いて、伶菜はまさかという顔をした。
そうだ
俺が守ってやりたいのは
三宅じゃない
奥野さんじゃない
だから、遠慮なんてするな
「日詠先生!!私、ココから自立する!!」
『・・・・・・・?』
自立?
ココから自立?
なんでココから自立?
「祐希を保育園に預けて働くから!!大丈夫、大丈夫♪・・・・体力には自信あるからっ!!!!!だから、お兄様のもとから自立します!!」
遠慮なんてするなって思っているんだけど
彼女が口にした自立は俺に遠慮している故の自立なんじゃないのか?
というか、体力には自信あるからって、聞き捨てならないよな
ホントに、どこをどうしたら、こういう流れになるんだ
俺、ついさっき、”お前の居場所はココだ”って言ったんだけどな
それでも、こういう流れになるとは・・・
ここまで自分の作戦を空振りさせられるなんて
伶菜はどこまでお人よしなんだ?
彼女に振り回されているらしい自分が滑稽に思えてくるぐらいだ
それに、貧血で倒れたことが俺が知っているだけでも2度もあるのに
体力あるから大丈夫って豪語するなんて伶菜はどこまで天然なんだ?
しかも、俺がどうしても守ってあげたい人がいるんですよね?って
どう聞いても、そういう他人の存在が俺の中にいるって言っているようなもんだろ?
彼女がそう捉えてしまうのは
彼女が天然なだけじゃなくて
俺の言い方に難ありなのかもしれないよな
『・・・・・・お前の居場所・・・・』
お前の居場所がココだと言うのは
俺にとってお前が大切な人だからという意味
本当ならそう言ってしまいたい
そう言ってしまえば
伶菜がここまでお人よしなことを考えたりしなくても済むのだろう
でも、言い方を変えて
伶菜が大切なんだと言ってしまうことは
多分、今のこの関係を壊してしまうだろう