ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「カルシウムもちゃんと摂りなさいよ!あと、伶菜ちゃんの内診、まだみたいだけど、奥野先生に頼んで下さい。」

『内診を・・・ですか?』

「まだ自分のコトでいっぱいいっぱいの今なら、まだ気にしないかもしれないけれど、伶菜ちゃんがナオフミくんとの関係性を知ったら、内診されてたとか抵抗あるかもよ?」

『・・・・・・・・・』


内診は産婦人科疾患の診察をするにあたって
本当に重要なことを知ることができる必要不可欠な診察方法
これも患者さんや妊婦さんによって抵抗感が高い診察方法
それでも、彼女や胎児の体調を知る上で行わなくてはならない診察なため、彼女の様子が落ち着いてきたら、行わなくてはと思っていた

それだけに、女性の立場でここまでハッキリと助言されると配慮が必要かもしれないと思わずにはいられない


「奥野先生も驚いていたわよ。ナオフミくんが伶菜ちゃんの緊急搬送に同伴してきたこと・・・とうとう見つかったんだって。」

『奥野さんが?!』


奥野さんが伶菜の存在を知っていたことにも驚いた。
奥野さんに彼女のことを詳しく話した覚えはないから。


「どういう経緯で伶菜ちゃんの存在を知ってたかは知らない。本人に聴いてみれば?内診、頼みやすくなるだろうし。」

『内診を他人任せにするってのは、俺自身、抵抗がありますけれど、伶菜の気持ちを考えたら、そのほうがいいかもしれない。』

「主治医を降りる気はないんでしょう?関わるきっかけが減ってしまうワケだし。」

『ええ。』


今更、主治医を降りるなんて考えられない
"父親はいません" と口にした彼女を俺が助けるって心に決めたんだ


「じゃあ、奥野先生に内診をお願いするのね。事情とかもちゃんと話して。」

福本さんの言うとおり、伶菜と同性であり、先輩医師として信頼できる奥野さんの力を借りるのも必要かもしれない


「ナオフミくんも今の状況にいっぱいいっぱいだから、自分の想いとかに気がついた時、あたしのアドバイスに感謝する日が来るかもね~。」

俺にドリンクパック牛乳をグイっと押し付けニヤリと笑った福本さんは売店で何も買うことなしに立ち去ってしまった。