【Reina's eye ケース32:こぼしてしまった三角関係】




祐希を連れて行ってきた定期健診の日。
帰宅してお昼寝していた最中、日詠先生がお土産のみかん大福を手にして帰って来た。

昨晩、ベランダで彼に抱き締められたことによって、なんか顔を合わせにくいと思っている中、彼がドアの隙間からチラつかせたみかん大福によって釣られるように寝室から抜け出す。


「なあ、そういえば、伶菜、今日、奥野さんに会ったろ?」

『あっ、ハイ。お弁当届けに医局に行った時に。奥野先生、お弁当を先生に手渡してくれたんですね?』

みかん大福を堪能した幸福感いっぱいな私は、さっきまでの動揺ぶりが嘘のように全くといっていいほど緊張感のない口調で日詠先生に返答する。


「いや、弁当は俺のデスクに置いてあった。病棟で奥野さんとすれ違った時に ”研究会の資料は自分がやっておくから、早く帰れ” なんて退勤を急かされてさ・・・・よくわかんないまま帰って来ちゃったんだけど、伶菜、奥野さんと何かあった?」

彼は眉間に皺を寄せながらじっと私を見つめる。


『えっ?!』

そんな彼の言動によってようやく再び緊張感を抱き始めた私。


ないよ
ない、ない


奥野先生とトラブルとかがあるところか


『奥野先生に助けられたんです・・・・あっ!!!!』


またまた出てしまった私の悪い癖
頭の中で思っていたコトを口にしてしまうそんな悪い癖


「何があったんだ?奥野さんもなんだか様子が変だったし、伶菜もあんなメールを送ってきたり・・そもそもなんであんなメール送ってきたんだ?」

彼は溜息を漏らしながら私の瞳の奥までじっと覗き込んでくる。