だが、このまま抗議を取りやめて引き下がるというワケにはいかない
不可解な行動とかをいつまでもなんでだろう?っていう目で彼女を見続けていたら、お互いに気まずいままだし、
そんな状態では今のこの生活は長続きしない


『・・・ったく、病院に居たのに”家に着いた”なんてメールをよこすなんてコトしやがって・・・もうあんな姑息なマネするなよ。』


だからちゃんと言う
ちゃんと自分の気持ちを言ってもいいという空気を
彼女に伝えるために・・・


『・・・・・・・』


俺の想いを理解したのか、してないのかわからないぐらい(とろ)けそうな顔を変えずに蜜柑大福を頬張り続ける彼女。


「ふあい、ごほめえんすわいいい」

彼女を見つめながら、自分が抗議した内容で彼女が落ち込んでいる様子はなさそうだと確信した俺は、なんとか平常心を取り戻し、まだいくつか箱の中に入っている蜜柑大福を1個摘みあげて、それに勢い良くかぶりついた。


彼女が(とろ)けてしまうのがわかる
蜜柑は甘過ぎず程よく酸っぱい
その蜜柑を包むこしあんが程よい甘さを与えてくれているこの蜜柑大福

これを一緒に食べながら
少し遠ざかっていた彼女との距離感がまた元に戻る

こういうのを仲直りっていうのか?

いつもの空気が
本当にあったかくて
本当に愛しい

だから

こうやって動揺させたり、動揺したりするぐらいなら
もう、抱きしめたりするとか
そんなことはもう止めよう

そして、不可解なことをそのまま放置して、
勝手に彼女のことをやみくもに心配して、ひとりでモヤモヤするのもやっぱりもう止めよう


俺は
伶菜と距離を置く事
そして
もう今のこの空気を手放すことなんて
できやしないんだから・・・



俺は指にベトリとへばりついてしまった大福の餅をかじりながら、密かにそう心に誓い、

『そういえば、伶菜、今日、奥野さんに会ったろ?』


早速動いた。
昼間の伶菜の不可解な行動、
そして、奥野さんの不可解な態度をも理解するために。