天然ぶりが入り混じる彼女のリアクションを目の当たりにして、自分のペースに持っていけたと確信した俺。



『まだ病院に居たのに俺に ”もう家に着いた” ってメールした罰な・・・コレは俺が全て頂くコトにしようか。』


昼間の彼女の不可解な行動に軽く触れながら、彼女の目の前で蜜柑大福の箱を開け、今にも食べる素振りを見せる。
すると彼女は口を開けたまま、動きを止め、きょとんとした顔で再び俺の顔を窺った。

やっぱり昼間、俺が見ていたことに
気がついていなかったんだな


「あーん。」

驚いた顔しながらも、目の前のものを欲しそうに口をもっと大きく開けているのが笑えてしまう
彼女がもう家に着いたという嘘をついたことに俺は一応、怒っているという空気を出しているのに、その空気を読んでいるのか、読んでいないかわからないような様子の伶菜

そんなにスキなのか?蜜柑大福が・・・



『・・・・・・・・』

なんで家に着いたなんて嘘をついたのかはわからないけれど、俺を避けてどこかへ行ってしまうことなく、こうやって家に居てくれたワケだし、
とりあえず、今は腹ペコらしい彼女の腹を満たしてやることが先決事項みたいだ


「・・・・・・・?!」

俺は自分の口元に引き寄せてあった蜜柑大福を伶菜の口へそっと含ませた。
彼女は俺の行動を予想していなかったのか、一瞬目を見開いたが、すぐさま蕩《とろ》けるような顔でそれをモグモグと頬張った。