『・・?!』
「なんだか、おかしいわね。実の兄の事を先生呼びするなんて。」
『・・・・・・』
「もちろん、愛しているわ。彼を。でも、それ以上に、才能を、彼の腕をね・・心から愛しているのよ。」
淀みなくそう言い切る彼女。
そこに感情なんか一切こもってなさそうな乾いた笑みを浮かべたように見えてしまう。
「彼も、私の事をちゃんと愛してくれているわ。だから、妹さんだろうと誰だろうと、彼と私の関係を邪魔するようなことは許せないのよ・・・」
彼女の顔からはさっきまでの乾いた笑みらしきものが消えていて、彼女は私に冷たい視線を浴びせながらそう呟いた。
私と祐希が東京から名古屋へ戻って来た時は
日詠先生と私は兄妹の関係なんだから・・と胸を張って彼に甘えるコトにした
それから今まで
彼の妹として、彼の家族として
彼の傍に居させて貰って
ささやかな幸せを感じながら今日まで過ごさせて貰ってきた
けれども、日詠先生には大切にしたい愛する人がちゃんといて
そんな彼とその人の幸せを奪い取ってしまっているのが
今現在、彼の傍にいる、この私だったなんて
耳を塞ぎたいけれど
もし、それが事実なら
「だから、アナタは日詠クンのお荷物なのよ・・・」
『・・・・・・・・』
彼女の言う通り、それが事実であるならば
私はこのまま彼の傍に居てはいけないのかもしれない
凄く寂しい
本当に寂しいけれど
多分、それが私が置かれている現実なんだ
「ちょっと聞き捨てならないわね・・・三宅サン。」
目の前にいる彼女の”お荷物”という一言で途方に暮れていた私の背後から、久しぶりに耳にする女の人の声がした。
「久しぶりね、伶菜ちゃん。」
「先輩・・・」
その声がする方へ振り返るとそこには、腕組みをしながら鋭い視線で彼女をじっと見つめる女性が壁にもたれながら立っていた。
その人は
妊婦だった頃の私の、主治医ではないものの、産科医師として私のコトをしっかりと見守り続けてくれていた
・・・・奥野先生だった。



