「私の父親は名古屋医科大学の産婦人科教授をしていて、私の母親は名古屋市内で産婦人科を開業してそこの院長をしているの。母親の病院でもやはり産科医師不足で・・・でも個人病院として続けていくには人手不足だからって提供する医療のクオリティーを下げる訳にはいかない。」
『・・・・・・・・・』
「だからより優秀な産科医師が欲しいの・・・病院経営を安定させるためにも世間に名前が知れ渡っている医師が欲しいのよ。」
確かに日詠先生は患者さんの間でも神の手を持つ産科医師として称されているぐらいだから
彼女の母親が日詠先生を自分の病院の人材として欲しがっているのは理解できなくもない
でも、不可解な点がないわけじゃない
『あなたのお母様が私の兄を欲しがっているのはなんとなくわかる気がしますが・・・でも、なぜ、彼があなたに頼らざるを得ないんですか・・・?』
私は彼女に説明して貰ってもどうしても理解できない事をハッキリと言葉にして彼女にぶつける。
彼女は鋭い視線を私に投げかけながら、フーッと息をついてみせる。
「やっぱりなにもわかってないのね・・日詠クンがこの病院に残るというのなら、大学教授である父親の圧力で大学からの派遣医師を全員撤退させる・・・しかし、彼が母親の病院に移れば、派遣医師達をこのままこの病院に派遣し続ける。」
『それってまさか・・・』
「つまり、日詠クンがどう動くかでこの病院の産科医療システムの存続、崩壊が決まるのよ・・・」
そんなこと、知らない
そんな交換条件みたいなことに彼が巻き込まれていることも知らない
「そして、ただ母親の病院に移るだけでなく、優秀な医師の彼を母親の病院の後継者にしたいの・・・つまり私の夫になるということね。そうすれば母親の病院は将来、安泰が約束されるようなモノだから・・・」
後継者とか、そんなことを日詠先生の口から一切聴いていない



