「そうよ、お荷物。私には日詠クンが必要なの・・・私だけじゃなくて、優秀な産科医師としての彼の手を待ち望んでいる患者さん達の為にもね・・・だから私には彼が必要なのよ。」
『・・・・・・』
「彼は優しすぎるから、この事をアナタになかなか言い出せずにいるみたいだけど。」
何がなんだかわからない
今、日詠先生はこの病院で彼の手を必要としている患者さん達に対して
彼が産科医師としてできる最大限のコトをしていると思ってた
なのに
そんな彼の手を待ち望んでいる患者さん達って
だから私には彼が必要って
どういうコト?
『・・・・・・・』
相変わらず言葉を発せずにいる私。
「この病院の産科医療システムを崩壊させない為にも、日詠クンも私を頼らざるを得ないのよ。」
『・・・どういう意味、ですか?』
日詠先生と彼女の間だけでなく、それ以外にもなにか深い訳があることをようやく勘付いた私は、やっとの想いで彼女にその訳を聴いてみることにした。
「そのうちアナタもわかることだろうから、聞いておいてもいいかもね。今、世の中が産科医師不足が急激に進んでいることはご存知かしら?」
『ええ、まあ。』
「そんな中、この病院に産科医師を派遣している名古屋医科大学の医局でも、この病院への産科医師派遣をすべて撤退する方向に動き始めているらしいの・・・」
大学医局からの派遣医師の撤退
ニュースや新聞の地方記事でもよく見かける事柄だけど
それがこの病院でも起きてしまったら、日詠先生みたいにこの病院に就職している医師の負担は更に大きくなってしまう
でも、それと彼の手を待ち望んでいる患者さん達の為にも、ってどういうコト?
「アナタ、よくわかってないみたいな顔してるから、この際、ハッキリと言わせて貰うわね。」
頭の中が訳のわからない疑問だらけの私が首を傾げているのを見た彼女は
相変わらず上から私を見下すような態度でそう言い放った。



