親父がいない今、彼女の聴きたかったことに答えるのは自分しかいない
彼女が聴きたかったことは何だろう?
そんなにも切なそうな声を上げるのはなぜだろう?

俺の知らない彼女がまだそこにいる


それでもずっと捜し続けてようやく見つけて
ようやくここまで近付いた距離


「・・センセイ?」

『・・・ゴメン。このままでいて。』


でも、俺と伶菜の関係を嗅ぎ付け始めている人間の存在
その存在がそこに踏み込んでくるかもしれないという脅威を感じる


それでも、彼女を守るためには
どうしても
何がなんでも
誰にも踏み込ませるわけにはいかない

俺と伶菜の間には誰も・・・・・



その想いの強さ。

「・・・・先生?」

『・・・ちょっとだけでいいから、このままでいてくれ。』

それが俺を ”真横から彼女を自分の腕の中に引き寄せるという行為” に走らせた。


兄妹という関係の上で成り立っている今の生活。

だから、こういうことはダメだと頭ではわかっているのに
この時の俺は自分自身で制御なんかできなかった。