聞き流してもいいかもしれないこの話
だが、俺にはその人が思い当たる節がある

飼い猫という言葉が思い浮かんだ瞬間、点と点が繋がって線になる

伶菜はその人がキレイだと感じただけなら、彼女を巻き込んではならない
これは俺自身の問題だから


『ふ~ん。じゃ、別にいいんだよな。』


俺はその一言で自分で何とかしようと心に決め、ペスカトーレを作った。
そして、何事もなかったかのように伶菜達とともに温かい食卓を囲んだ。

カチャトーレとペスカトーレ、他にもサラダがあったりとボリューム満載の夕飯だったが、他愛のない話をしているうちにふたりでそれらを全て平らげた。


「食べ過ぎた~。」

『少し休憩しろよ。今日、検診へ行ったりして疲れただろ?』

「うん。そうする。ベランダで夜風に当たってくるね。」

『ああ。』


いつもは夕飯が終わるとさっさと食器の後片付けをし始める伶菜だが、忙しかっただろう今日は少し休ませてあげたい。
そう思い、伶菜がベランダへ向かったのを確認してから、俺が食器を片付けた。

そして、今にも寝てしまいそうな祐希を寝室へ連れて行き寝かしつけてからリビングに戻ったが、伶菜の姿がなかった。


『さすがにベランダで寝ちゃったりしてないよな?』

自分の中では随分時間が経っているような感覚が、彼女がいるはずのベランダに向かって俺の足を動かす。


『いた。』


ベランダのドアを開けると、そこには

「お父さんに聴きたかったコト、いろいろあるんだよ・・・・」

雲がかかった空を見上げ、切なげにそう呟く伶菜の後姿があった。