今日は俺が夕飯を作ると言ったのに、甘酸っぱい香りがキッチンのほうから俺がいる玄関まで届いている。
トマト?
何を作ってくれているんだろう?
でも、折角これだけたくさん食材を買ってきてしまったし、楽しみにしているだろうから、食べさせてあげたい
彼女が作ってくれたものは俺がご馳走になればいい
沈みかけている気分を変えるのに、料理するとかもアリだしな
『ただいま!おっ、祐希起きてるな。じゃあ、早速作ろうかな・・・ペスカトーレ。』
「先生、おかえりなさーい。先生、今、なんて言った?」
ペスカトーレと答えたら、”ペ” がつく料理はペペロンチーノだと思ったと戸惑う伶菜
もしかしてペスカトーレ、嫌いなのか?と今度は俺が気にかけるとトマト料理がかぶったと笑う伶菜
色々な伶菜が見られるのも
彼女のすぐ傍にいるから・・・・
俺は彼女達がいるこの生活はもう俺にとって
なくてはならないものになっている
いつかは伶菜にも一生添い遂げたい人が出来てここから離れる日がくるかもしれない
そんな日が一日でも遅くなればいい
そんな日が一生来なければいい
そう思うのは
自分勝手な俺だけなんだろうか?
自己中心的にそんなことを思ってしまったせいだろうか?
「今日の昼間、病院の受付で私達と立ち話していた時に黒いハイヒールを履いた白衣の女性を見かけなかった?」
伶菜のその問いかけ
それが俺の浮付き気味の心を現実に引き戻す
もちろん伶菜のせいなんかじゃないけれど
「どんな人だ?」
『髪をアップしていて、凄くキレイな人・・だったかな・・・』
放っておいてはいけなさそうな現実に俺はちゃんと踏み込んだ。
しかし、伶菜はただその人がキレイだと思っただけだと言う。



